|
狙いを定める癖がある
見たもの全てに視線が定まる
だから帽子を被り 視線を伏せる
その視界にわざわざ入ってくる奴は
そしてそれが仕事だというのなら
俺のことは恨むなよ
リモコンを手にし、チャネルを変える。
映し出される画像の色が画面から飛び出して部屋の壁に反射する。
緑や赤、黄色や紫。世界中には色んな色があるもんだと感心する。
流れる映像にも色んなモノがある。
車のCM、女の化粧品、バラエティに映画。
昨日見た、人形が歩く映画のオープニングはちょっと面白かった。
今日のワイドショーはあまり面白くない。
リモコンのボタンを押してチャンネルを変える。
画面が変わり、世界地図が写る。
オランダにポイントが当てられて、チューリップの花畑がアップされる。
ボタンを押して、チャンネルを変える。
画面が変わり、今日の映画。
今日の映画は
グラスに注いだ酒を飲み干す。
そのときテレビの画面は階段を映し出した。
焦げ茶色のジャンパを着た男がそこを登ってくる。
周りを伺いながら廊下を進んでいる。
俺はグラスをリモコンの横に置いて立ち上がる。
画面の中で、ジャンパを着た男は廊下を歩いている。
俺は腰の後ろに手を伸ばす。
テレビの中の、ジャンパ姿の男は504と書かれた扉の正面に立つ。
俺は腰から銃を抜く。
ジャンパ姿の男は扉の前でマシンガンを構える。
俺は扉の、除き穴に銃口を押し当てる。
映像の中の男がスウっと息を吸い込んだとき、俺は引き金を引いた。
銃声がして、オンオンという耳鳴りが残る。
画面の中の男は喉元から血を噴出しながら後ろへ倒れた。
扉の向こうでドサリと物音がする。
ドアノブに手をかけて扉を開ければ、マシンガンを抱えた男がひとり倒れている。
喉元から血が流れ出して、両目は鳩が豆鉄砲でも喰らったように見開かれている。
廊下に赤黒い液体が広がる。
目の前のコイツは鳩じゃない。
俺たちの死に様はそれぞれだ。
マシンガンで奇襲攻撃。
扉を撃って虚をついて、部屋になだれ込んで止めを刺そう。
そんな風に考えていたのだろう男はもういない。
鉄砲玉とはよく言ったものだ。
一度放たれたら戻らない。
それにしても質が悪い。
おそらく御同業だろうに。
監視カメラにも気がつかずに、扉が鋼鉄製であることも見えていない。
それすらも解らずに来たのだろう男。
目標に対する事前調査と判断力の欠如。
それはもう自業自得。
ビルの空気が変わっている。
全員が聞き耳を立てている。
ここにいるのも潮時だな。
だからさよなら、だ。
あの映画は、ちょっと見たかったのに残念だ。
古く懐かしい歌が流れていた。
How many miles to Babylon?
Three scare miles and ten.
Can I get there by candlelight?
Yes, and back again.
If your heels are nimble and light,
You may get there by candlelight.
ロウソク灯して行けるかな
あぁ 行って帰れるさ か
バビロンまで 行って帰って何をする
足が速かろうが軽かろうが
ロウソクの炎は容易く消える
70マイルも持ちはしない
とても容易く消えてゆく
あれはロウソクの光か
いや アレはライターの 火
BACK
<>NEXT
|